2023-01-01から1年間の記事一覧
"普通種"というのは沢山の個体数を観測しやすい。此の状況のメリットが何かというと、特定の生物集団について"集団内の連続的な変異幅"を理解し易くなる事が挙げられる。普通種の変異幅の出方を知っておけば、認知されにくい希少種の変異幅も少数個体からあ…
オーストラリア産Figulusの不足分を補充していた頃、見慣れない個体群があったから調べてみると其れ等は"Figulus trilobus Westwood, 1838:トリロブスチビクワガタ"であるらしいと知った。希少性は不明瞭だが普通種ではなさそう。 当時、分類屋の友人に意見…
インド東部アッサムから記載されたProsopocoilus (Kirchnerius) boreli (Boileau,1904):ボレルノコギリクワガタは希少種と知られ、インド東部ナガランド、ミャンマー北部に局在的な分布、またインド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州とチベットで多産地…
ベトナム産クワガタムシ科で最も謎が深いものの一つに"ニセカスタノプテルスマルバネクワガタ"がある。既知種の何であるか未記載の分類群であるか不明瞭な事情もあるが、其れだけでなく希少性の謎が深い。 ("タムダオ産"マルバネクワガタ属不明種。故・西山…
仏国の通販サイトで"O. leuthneri"として売られていた虫個体があった。しかしなんだか妙な雰囲気の見た目をしていた事と即決2千円くらいと安価だったので発注してみる事にした。 (不明種♂個体は体長54.9mm。見慣れない雰囲気) 実物が届くと、やはりOdontol…
ヒマラヤ山脈から雲南の山脈群にかけてGenus Digonophorus Waterhouse, 1895:セスジクワガタ属が分布する。殆どが西暦2000年以降の十数年で次々と発見された新分類群。 中標高〜高標高にかけて分布し、成虫の雌雄で形態差が大きい事から♂と♀で別種扱いだっ…
20年近くかけて漸く5頭というソリアシサビクワガタがある。個体群はベトナムの3産地から。入手は全て原産国直ルートを使用した。 (ベトナム南部産。1頭のみで原価すらかなり高額だった。。此の系はタイでも希少だそうだが、ベトナムでもかなり物珍しいらし…
過去に変わったソリアシサビクワガタを2頭手にする機会があった。詳細は公表しないがニューギニア島に近い離島の産。 (初見時は「そんな場所にミレス?」と意外さを感じた) 一見ミレスソリアシサビクワガタに似るも、頭部の前方に伸びる角状突起は比較的太…
カスタノプテルスマルバネクワガタについて網羅的に調べようとしていた折、標本商の友人がインド・ナガランドで似た個体群を見つけていたらしい事を知った。カスタノプテルスに似てはいるが、なんだか異様な体型に見える。しかも黒化型も見つかっているらし…
2022年に採集されたPrismognathus sp. :オニクワガタ属不明種。当記事で産地データの公開は控えるが、iNaturalistで探すとデータに近い場所で外形のよく似た個体の観察記録が見つかる。同産地では他種は多数見かけるものの、此のオニクワガタ不明種だけは見…
長年に亘り悩んできた分類群例としてNeolucanus perarmatus Didier, 1925:ペラルマトゥスマルバネクワガタがある。人間が問題を引き起こして訳が分からなくなっている分類群というよりも、生物学的に種内分類の解釈が困難な分類群として。 N. perarmatusは…
友人達から時折データの事で問い合わせが来る事がある。昔に集めた他者採集品のコレクション群の中に、違和感があるものが見つかる事がある。或いは転売系商売人から妙な売りのオファーの話を聞く場合など。ヒルスシロカブト系グループでも其れがあった時の…
今回のタイトルについて、ちょっと知ってる人の中には「何を阿保な。図鑑に掲載あるでしょ」と思う人達がいそうな予感がする。しかし少々難しい問題にぶつかったため記事にしておく。 私がカスタノプテルスマルバネクワガタのグループについて熱くなっていた…
"同定"となるとタイプ個体や学名の事が関わってくるが、其れまでにとりあえずグルーピングだけしておこうとなると、学名の付与をせずとも"既知の分類群に対して、どの生物集団が種と分けられるか、亜種と分けられるか"等の分類は可能である。 一般的な"分類…
2005年頃の昆虫業界失速の折、私がよく入り浸っていた幾つかの直輸入店は転業という形で昆虫業界から退いていった。思えば暇な時間帯には店主と客がテレビゲームなんかして牧歌的な店だった。売れ行き高の成長率が鈍化したなか中国など原産国の人間がインタ…
(2023.July.26th.記)最近某SNSに"コミュニティノート"なんて機能が付いたらしい。見てみると論文の査読によく似る部分がある。扇動的なSNS投稿や査読よりも大人しい補足文章が明瞭な場所に貼り付けられるシステムは特徴的。各々懸念されるノートの信頼性自…
社会のインフラは結構な割合で科学的な技術に頼りきっている。反して疑似科学というものが知られ、インターネット上で調べても大量の話が出てくる。疑似科学とハッキリ判るものと、科学との境目が判然としないものがある。 https://gigazine.net/news/202105…
2002年採集とされる南米のSphaenognathus sp. 1♂個体。データの示す産地エリアからは此の1♂以外に同属の存在を知らず、追加資料も全く見られない。 (詳細産地の公表は控えるが、ヒントを言えばシワバネクワガタ属の採集例としては初めて知るエリアのデータ…
コモロ諸島とマダガスカル島では、それぞれでノコギリクワガタ属種群の分布が見られる。しかし其の分類上の問題として気になる点が多数見つかったため今回まとめていく。 (マダガスカル島産Prosopocoilus。巨大な完全大歯は結構な迫力) 先ずはマダガスカル…
†Oncelytris esquamatus Li, Yan-Da, Huang, Di-Ying, Cai, Chen-Yang, 2023. Holotype data: Amber mine located near Noije Bum Village, Tanai Township, Myitkyina District, Kachin State, Myanmar; unnamed horizon, mid-Cretaceous, upper Albian to …
分類屋の友人と分類や種概念について延々と議論していると「コントロールが無かったり間違っている論文が分類学論文にとても多い」という話に度々なる。此処で言う"コントロール"とは一般的に使われる"操作"として意味する言葉ではなく"対照群"の事。 https:…
ベトナム北部から此れまでに見た事もないマルバネクワガタが見つかったらしくebayでの出品で初めて写真図が一般的に示された。今回は其の虫について関連する事を現状解るところまで深掘りしてみる。 (ベトナム北部産マルバネクワガタ不明種。艶めかしく華麗…
2016年に採集されたGnaphaloryx sp.:ソリアシサビクワガタ不明種。2♂1♀原産地から出品されたが、1♂は逃してしまい1ペアのみ手元にある。 (産地の公表は控えるが、ヒントとして近縁種の分布が無い飛び地の産。インドネシアやマレーシアやフィリピンではない…
2002年から"くぬぎ出版"で出ていた漫画作品「鍬道」は、連載当時のクワガタを中心とした業界について色々なテーマを扱われた漫画作品。初心者向けガイドみたいな仕立てのストーリーで構成される。基本的に各話でテーマが異なる。 http://www.hf.rim.or.jp/~f…
コンビニで急いで買い物をしている時に、ゼロコーラをコーラと誤同定して買ってしまった事がある。気づいた頃には既にコンビニから遠ざかり買い直す気分にもならなかった。何度も飲み比べしていたから"味見すれば違いが分かる"とは知っていたものの、買う前…
"Sierra Leone"のProsopocoilus kirchneriが手元にやってきた。資料が少ないものの安価であったため仏蘭西の通販サイトから取り寄せたもの。 https://ivene.hatenadiary.jp/entry/2022/12/25/012734 "Prosopocoilus modestus"と誤同定された採集年も分からな…
二束三文レベルで仏蘭西から古い個体群が多数売られていたので取り寄せてみたなか、かなり違和感のあるデータの個体群があったので、今回其のうちの一つについて考えてみる。 (ギラファノコギリクワガタのいずれかの亜種。しかしデータは"ダージリン"と"ジ…
国際動物命名規約に従って分類の作業をしようとすると、種や亜種の分類が可能と分かる。種についてはマイヤーの種概念を参考にするが、亜種についてはどうなのか。国際動物命名規約では亜種よりも低位の実態は除外されるから、分類をする前に其れ等と亜種を…
昨年末に久々に面白い出品がなされたが誰も入札しなかったので落札した個体について、やや数奇な運命に見舞われていたようなので少し記す。 (個体はニューカレドニア北部ロイヤルティ諸島リフー島に分布するとされるトリデンスミツマタサイカブトの大型♂個…