2022-01-01から1年間の記事一覧

【Memorandum】どっちが本当?〜二重データについて〜

図鑑にあるデータを参照して、どの地域にどんな形の生物が分布しているのか調べる事がある。しかし変な掲載に出会す事が少なからずある。 アフリカ産クワガタ等を調べていたなか散見された事がキッカケで書く記事となるが、以下に実例を列挙して考察する。 …

【Memorandum】 "Neolucanus curvidens"の学名有効性と、近似個体発見について

ベトナム北部の或る地域で採集された、変わった小型種らしきマルバネクワガタを1♂入手し調べてみた。 (件の変わったベトナム産マルバネクワガタは全体的に艶消しで上翅の発色が鮮やか。しかし今まで見つかっていなかった) シニクスマルバネ原亜種に似た雰…

【Memorandum】 シニクスマルバネクワガタ原亜種の基産地問題

浙江省からNeolucanus sinicus sinicus (Saunders,1854):シニクスマルバネクワガタ原亜種と思しきクワガタが採集される。しかしシニクスマルバネとは何なのか。採集個体群と照らし合わせる目的で、これが鮮明に解る文献がなかなか無い。 シニクスマルバネと…

アルフレッド・R・ウォレスの厭世観

過去に大学の恩師から「良書だよ」と紹介された書籍に1869年ウォレス著の「マレー諸島」があり、久々に和訳本を読み耽っていた。古書には名著が多い。 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480080912/ https://www.chikumashobo.co.jp/product/97844…

【Memorandum】原記載に無い"パラタイプ"の後出し増産は規約に反する

「パラタイプ」個体が"通常の定価"よりも高額で取引される事が昔からある。"原記載者が記載に使用した個体"という証書みたいなものだから特別視される。 私は様々な理由から"パラタイプの売却"に反対する考え方をしているが其れは個人的なものであり特段止め…

【Memorandum】ヒトの学名Homo sapiensの語源とは?

現生種のヒトを示す生物学名Homo sapiens Linnaeus, 1758の語源について「賢い人」と説明する人がいて違和感があった。その理由は"人間が賢い?"という疑問の意味ではあるが。 https://m.youtube.com/watch?v=UneaXXgExJU&feature=emb_title なるほど今のWik…

【Memorandum】流行りの自作自演式吊り上げ

過去記事でネットオークションでの値段吊り上げについて書いたが、ネット上では毎日のように注意喚起や文句が散見されるので分かりにくいケースには触れなかった。 https://ivene.hateblo.jp/entry/2022/07/07/000100 分かりにくいケースは増えつつある。注…

【Memorandum】"天然"個体

外国産昆虫の生体輸入解禁があって暫くの頃、生体側の販路では"野外個体"という単語はあまり使われず「天然」という1語で"飼育個体ではない"という意味の話が普通に通じていた事がある。野外個体という言葉が滅多に交わされない程に。(昔は"ワイルド"とか"W…

【Memorandum】グラントチリクワガタの亜種分類についての疑惑

南米チリ〜アルゼンチンに分布するゲーミングカラーなグラントチリクワガタ:Chiasognathus grantii Stephens, 1831は異形なクワガタとしても有名である。 2012年に或る亜種名があったが以下ページでPaulsen氏によりシノニムと記述されるが、此の話題につい…

【Memorandum】"ベトナム産"サワイコクワガタの謎

サワイコクワガタ:Dorcus sawaii Tsukawaki,1999というと中国で初めて見つかった変わったクワガタである。そしてベトナム・ゲアン省からもという事で亜種名:Dorcus sawaii norikoae Tsukawaki, 2011が記載された事がある。しかしベトナム亜種に関しては中…

【Memorandum】普通種に紛れる希少種、Xylotrupes faber

普通種のイメージが濃いグループでも、しかし分類群によっては資料の数が集まらない事がある。 ジャワ島に広く薄く記録のあるXylotrupes faber Silvestre, 2002:ファベールヒメカブトは典型例。カブトムシ亜科のヒメカブト類は産地に行けば大抵は採集される…

【Memorandum】日本国産オオクワガタ

1998年に入手しておいたWF1個体を手許の未整理ストックから発掘したので懐古。大阪府箕面市産。まだ他にも埋もれていそうだが、野外個体は手元に無い。 当ブログ筆者の私は今から26年前の1996年に初めてオオクワガタの採集個体を目にした。自己採集では無い…

【Memorandum】忘れられる学名と未記載維持の意義

種を同定する時、結構調べても分からない事がある。情報の少ない既知種であったり未記載種であったりする。 ここ数年は随所で学名が商品名的な扱いをされている事が多いから、あんまり自分が興味を持った頃と雰囲気が違う感じなのだが、まぁそんな"収集癖の…

【Memorandum】原産地に採集人がいない種群

原産地に採集家が居ないから資料が集まらない種群というのが普遍的に多い。だから誰かが採集に行くと沢山採集出来て大量に売り出し暴落するというお笑い的出来事がよくある。 以下は原産地に採集人が居ない種の資料群。原産国人以外が採集した個体群。 (パ…

【Memorandum】とある外国現地の意見書から「生体提供はもうしない」

付き合いの長い或る外国現地の友人と話していた折このような御意見を頂戴したので記事としたい。氏のグループにお世話になってきた本邦生体業者が複数あるというのは様々な所から見聞きしている。 「希少種を扱ってきた我々として、"以前は野外個体を売れた…

【Memorandum】オークションでの"サクラによる吊り上げ"らしき例

最近やたらめったら吊り上げくさいオークションを見かけるようになった。 そんなオークションにかけられて吊り上げられるのはなんと虫の死骸、しかも産地柄得やすそうな虫である。 虫は絶滅種でも無い限り自然界で恒常的に産出される。よほど揺るぎない希少…

【Memorandum・甦る伝説】国境付近のデータ騒動

データは再現性を示す重要な知識。化石に其れが無いと何を見ているのか分からない事が多い。現生種でも似た壁によくぶつかる。其れを考える上で良い例になる、2005年のネット上で起きた虫業界の事件を挙げる。 当時は巷でよく話題になった話だったが、昆虫雑…

【Memorandum】ストークネブトとフジタネブトは同種?

結論は出てない。分類屋の友人と議論中に生じた説。 (「Mizunuma, T., & Nagai, T. 1994. The Lucanid beetles of the world. Mushi-Sha Iconographic Series of Insects. H. Fujita Ed., Tokyo 1:1-338.」より引用。Aegus storki Nagai in Mizunuma & Naga…

【Memorandum】琥珀内昆虫の状態についてメモ

琥珀中の太古の虫で高品質な状態を保っている個体は少ない。 バルト琥珀中では時たま良質な個体が見られるが、ミャンマー琥珀では著しく希少である。複眼などは硬い構造だが琥珀内の虫は複眼も脆く潰れている個体が少なくない。 私の予想だが、樹種由来の樹…

【Memorandum】Dynastes hercules baudrii Pinchon, 1976の分類について

色々問題のあった分類群Dynastes hercules baudrii Pinchon, 1976の処遇だが1978年にPinchon自身がセントルシアの個体をレクトタイプに選んでしまっていた事が分かった。これはレイディの記載者シャルメアとの喧嘩みたいな論争が原因だったのだが結局シャル…

【Memorandum・事例】原綴り"Neolucanus baladena"が有効

インド北東部周辺に分布する普通種「バラデバマルバネクワガタ」として親しまれる生物種分類群について、Krajcik, M., 2003の「LUCANIDAE OF THE WORLD Catalogue – Part II., Encyclopaedia of the Lucanidae (Coleoptera : Lucanidae), Czech」文献中にて…

【Memorandum】Hybrid beetles.

商売の為に人工的な系統を作るのは非倫理的と評されやすい。しかし作り出すのは容易なので金銭的価値は殆ど無い。 (グラントシロカブト♂とヘラクレスオオカブト原亜種♀の交雑個体群。青白く胸角基部突起は基部寄り、また頭角先端は顕著な斧状にはなりにくい…

此処は別館①

ここ別館はメモを置く場所。解説の省略が多い。本館の記事とは無関係な話題多め。 (ヘッダーはヌエクワガタ完全大歯のサイドビュー) 本館はこちら。https://ivene.hatenablog.com (ブログアイコンはAlienopteraの腹面)