【Memorandum】普通種に紛れる希少種、Xylotrupes faber

 普通種のイメージが濃いグループでも、しかし分類群によっては資料の数が集まらない事がある。

 ジャワ島に広く薄く記録のあるXylotrupes faber Silvestre, 2002:ファベールヒメカブトは典型例。カブトムシ亜科のヒメカブト類は産地に行けば大抵は採集される。しかしファベールヒメカブトは少ない。タイプ標本も古い2♂と比較的新しい1♂のみであった。

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(ファベールヒメカブトはジャワ島に薄く広く分布する。赤味のある個体の方が多く、黒っぽい個体は少ない。ジャワ島から大量に虫が輸入されていた時期の個体群しか無いが、4♂1♀揃えるのに15年以上かかってしまった。交尾器は非常に特異的であるため判別に困る事は無い。画像中最奥に見切れる♀個体は、全く意図せず入手したジャワ島産ヒメカブト類個体群に偶然混じっていたものから、消去法および雌雄共通の特徴から見出せた。後から一致する形の♀を探し回ったが見つけられず追加はならなかった。♀の記録は公式には無く、非公式でも他例は知らない)

https://science.mnhn.fr/institution/mnhn/collection/ec/item/ec2612?lang=en_US

 こういう種は人海戦術でなくては採集が難しい。昔のように沢山の採集人を雇う事は今の世の中厳しそうである。とはいえ原産地で探索はしてみたくなるのが、こういった資料不足の希少種である。

【Reference】

Silvestre G., 2002 - Les Xylotrupes de Java et des petites Iles de la Sonde (Coleoptera, Dynastidae). Coléoptères, 8 (18) : 253-265.

【追記】

 ヒメカブト類については一度分類の纏めを下書きした事があったが、博物館や研究者、コレクターや標本商などのデータ取扱いに満遍なく疑念があったり、様々なブラッシュアップが必要と感じたため知見の公表を伏している。観察を繰り返さねばならない。

 一つ例を暈して言えば、Xylotrupes gideon (Linnaeus, 1767)のタイプ個体群、特に重要なスウェーデン・ウプサラにある個体を解剖したところでは、ある地域の個体群に一致しており、通念的な知見とは一致していない。