【Memorandum】クワガタムシ科等分類のための観察

 "同定"となるとタイプ個体や学名の事が関わってくるが、其れまでにとりあえずグルーピングだけしておこうとなると、学名の付与をせずとも"既知の分類群に対して、どの生物集団が種と分けられるか、亜種と分けられるか"等の分類は可能である。

 一般的な"分類学"のイメージとしては"同定してから分類する"という手法であるが、科学的に考えるならば"分類をしてから、どの生物集団に、どの学名が付けられるか同定する"方法が当然の手法である。一般庶民にはどうしても前者の方法しか採れない事が多いから其れしかないが、研究者達は後者の方法を採らねば科学的な分類が出来ているとはとてもいえない。

 外形の観察も多数の個体で、背面・腹面・側面、また其れに加えて様々な角度から見比べてみるが、これについてはズラリと並べて比べるという遣り方が、大抵の分類で行われる。

f:id:iVene:20230805225527j:image(この頃頻繁にebay等で原産国出品から不明種が出てくる。1つ注目を集める個体群のグループがあったが、私は誰も気づかないような不明種も別途見つけ、とりあえず全て入手し友人達を唸らせた。しかし数が足りないものもあって4〜8年以上1頭きりというのも幾つかある。希少系は数を集める事が一番しんどい。此のグループは綺麗に網羅的な分類するのにかなり時間がかかりそう)

 しかし交尾器の比較については、同じようにズラリと並べて顕微鏡で比較するという方法を採用している人達は、どれくらいいるのか。分類屋の友人に聞いてみたところ「そこまでしっかりやってる人は他にいない」なんて言われて逆に不安になってしまった。

 曰く「交尾器を見える状態にするところから面倒くさがる人が殆ど」だそうで、そもそも私みたいに"全個体分について詳細まで見えるようにする"段階の人達は他にいないらしかった。

f:id:iVene:20230805214208j:image(交尾器は詳細まで見えるようにして並べ、顕微鏡を使って比較する。どの個体から摘出した交尾器か判るように対応する個体識別番号を各個に記入しておく。元の個体と対応しない個体に付けてしまうと"分類の認知的再現性"が損なわれてしまうから注意が必要である。観察では分かりやすい差異なら一瞬で分かるが、分かりにくいと結構時間をかけて比較考察する。交尾器が分類に使用出来るかどうかは、先達の人達の間でもよく議論があった。Didierは1937年の論文等で交尾器の研究をやったが、DidierとSéguyによる1953年の文献等では"そんなに使えないんじゃないかなぁ"みたいなスタンスだったらしい。だが後年の数多の研究家達によって分類に交尾器を用いる事が評価されてきた歴史もある。しかし昔の人達が出した虫体死骸資料群の交尾器は比較に適した姿勢とはなっておらず、数量にしても観察不足が多く懸念される)

 「いやちょっと待ってください。ここまでしないと分からない分類も沢山あるんですが。なんで分かろうとするところまでやろうとしないんですかね」と聞いてみると、友人は「さぁ、彼らにはそんなに分類学に興味は無いのかも」なんて仰られる。実際どうなんだろうか、科学の世界でもよく似た思惑の応酬は見られるが。なぜ杜撰なのか。

 生物科学は観察方法によって、確証を得ることが出来ないと成立しない話が多い。科学者達の行う実験や観察方法は、一般庶民や普通の学者・研究者達が行うよりも、ずっと精密である。新しい発見をするため、応用研究をする上で前提を誤った状態にしないため、其れが嘘ではないという確証を得るため、様々な理由があるが其れ等が科学者達の間では当然且つ最低限の作法・流儀とされ、出来ていなければ"オオカミ少年"よろしく信用されない。

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 インターネットが発達して"デジタルタトゥー"等という言葉が出てきているけど、科学の世界だと"論文"の方がずっと重い刻印になる。だから科学者達は論文を書く際には後ろ指を指されないように精密な論理を書く。

 デジタルタトゥーとは、Digital(デジタル)とTatoo(刺青、タトゥー)の2つの単語を組み合わせた造語で、デジタル情報(文字や画像、動画など)がSNSやブログ、検索エンジンを含むインターネット全般に公開され、 “将来の自分にとって不利益な情報が残り続けてしまうこと”。情報をアップした、もしくはアップされたときは問題がなくても、あとあとになって問題になることに気付いていくこともあり、自分では容易に消せないところが問題になっています。

https://www.softbank.jp/sbnews/entry/20230118_02

 であるので、私は駄目な論文を書く人達には全く投資しない。負け率だらけの博打に賭けるのはリスクが高過ぎる。

https://twitter.com/satetu4401/status/1687477416774803456?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw

 ちなみに私は"昆虫の分類を研究している人達の中にプロはいない"と考えている。"生物"を"研究"する上で、分子生物学等の他生物学分野や論理学、また物理科学的な学がある昆虫分類学者はどれくらいいるのだろうか。皆無ではなかろうか。

https://brh.co.jp/s_library/interview/79/

【追記】

 1250種くらいで頭打ちと考えていたものの、そろそろ手持ちのクワガタムシ科で1300種の壁が見えてきた。かなり厳しめのカウントで1300種に近く、他の人達がやってるような粗っぽい外形分類なら"1500"は簡単に越す。亜種もしっかりカウントすれば分類群単位ではどうだったか。またカウントし直さないと。