【Memorandum】二重データ~実物編~

 二束三文レベルで仏蘭西から古い個体群が多数売られていたので取り寄せてみたなか、かなり違和感のあるデータの個体群があったので、今回其のうちの一つについて考えてみる。

f:id:iVene:20230320172042j:imageギラファノコギリクワガタのいずれかの亜種。しかしデータは"ダージリン"と"ジャワ"の2枚が付いていた。。両方とも古めかしいラベルで採集時期は不明。虫の見た目はダージリン産らしいものの、此のデータでは科学的資料にはならない)

 以前には文献上の二重データについて記事にした。

https://ivene.hateblo.jp/entry/2022/12/24/004303

 今回は実物について有り得る話。

 ラベルは紙で文字は人間が書いたものだから、其れが真実を言っているとは限らない。

 二重データではなく一つのデータだったとしても他者採集ならば、其のレベルの信頼性であり、虫資料の生物学的形態を考えて見通しの同定をするしかない。だから例えば今回のように明瞭に矛盾したような個体群について言えば、参考になりづらいから分類等の論文に載せないべきであると考えられる。

 こういう個体群については今回記事のような"ネタ資料"にするしか使い道がない。勿体ない話である。データは正確で真実が書かれていなければ自然界で再現性を確認出来ない。

【追記】

 古い虫個体群は出品されても、かなり安価で二束三文レベルのものが見られ、新しい個体群より安価という事も少なからず見られる。

 過去に似たような出品をしていたドイツ人採集家に何故安いのか聞けば、曰く「日本だとどうか知らないけど此方では古い物は珍しくない。安くで遺品として回ってくる事も多い。データだって古くて同定しづらい虫だと杜撰で信じられない物も多いから。」という話だった。

 確かに、適当に集められた個体群に杜撰なデータラベルを付ける人達もいたと考えられる古い個体群は沢山ある。「此の形だから、此の産地だろう」というように。

 叩き売りのように見える二束三文レベルの販売も"持っていても仕方ないし買ってくれる人の手に渡れば良い、だからと言ってデータに欠陥の可能性のあるものに普通以上の値を付ける訳にもいかない"という良心的な商売だったと察せられる。

 誤同定や目に見えない要素を考えた場合を考慮し"だろう運転"で産地ラベルを付けてはならないが、やる人は少なくなかったらしい。

 そういう事が有り得てデータが怪しげで分からない場合は科学的に考えれば、例えば分類学的な考察目的ならば"原産地で最初から採り直し"という方法が最も推奨される。ただし架空のデータであるならば現地人による確認を待てば早晩結果が分かろうも、絶滅されていたりすると大層面倒な話になってしまう。

 採集歴の長い有名採集者などは詳しいデータを付けている場合が多い。新しいデータだからといって模倣された捏造データなども有り正確とも限らないが、こういう事もあるから古過ぎるデータを避けて信頼性を見定める人もいる。