【Memorandum】未記録(?)データの個体について

 "Sierra Leone"のProsopocoilus kirchneriが手元にやってきた。資料が少ないものの安価であったため仏蘭西の通販サイトから取り寄せたもの。

https://ivene.hatenadiary.jp/entry/2022/12/25/012734

 "Prosopocoilus modestus"と誤同定された採集年も分からない一枚のラベルが付いた古めかしい個体だが、P. kirchneriならば現状"シエラレオネの分布"は文献上で未記録と考えられる。

https://ivene.hatenadiary.jp/entry/2022/12/12/220251

f:id:iVene:20230328092132j:imageP. kirchneriコートジボワール〜ガーナから記録され、他種の分布状況を考えてもシエラレオネに居て不思議ではない。不思議ではないが、、)

 しかし此のデータの場合、やはり信用ならない。"P. modestus"と誤同定されたが故に、誤った産地データを杜撰に後付けされた可能性もありうる。

https://ivene.hateblo.jp/entry/2023/03/21/010925

 シエラレオネからP. kirchneriについて他に良い記録が無い状況、採集経緯を辿りづらい此のデータの再現性は低く見積もられる。

 例えば仮に、今回のデータが虚実でP. kirchneriが最初からシエラレオネに分布が無い場合、自然界で観察や採集をしようとする人達にはシエラレオネP. kirchneriの野生個体群を見つけられない。絶滅していたとしても見つけられない。

https://globalnewsview.org/archives/8196

 今回の個体の場合、たとえ真実だったとしても虚実の可能性も充分考えられるから、勿体ないが記録資料には出来ない。「真偽不明の産地データ」とのラベルを追加す。

【追記】

 科学研究の為に知見を利用する人達と、自己本位の為に知見を利用する人達とでは、しばしば主張がぶつかる。科学の為には両立出来ない。どちらが良いだろう。

 誤データが資料群にコンタミしないよう、公的機関によっては研究プロジェクトで採集された資料群、特定の個人・団体が採集した個体群、寄贈された個体群、等で区別可能なようにラベルされてある事もある。完全な締め出しにはならないが、其の対策方法はコンタミ防止策として参考になる。

 採集経緯の不明瞭で奇抜なデータは、偶産や誤り、捏造、知らない間に移入した個体群など様々な可能性を含むから解釈困難な事が多い。

 「面白い話」と、検討も薄いまま聞こえの良い話としてゴリ押ししたがる人達は多くいる。しかしそういうのは一般論として迷惑な話である。ただ集める事だけが目的の人には其れ程障壁は無さそうだが、採集や研究の為に即時参照したい人達にとっては明確な障壁になる。  

 データは将来に再現性を確認する手掛り。其の動機や信頼性を損う虚実への対策を考えねば、研究や資料収集といった話に上手く繋がらない。

https://gogen-yurai.jp/naitebasyokuwokiru/