【Memorandum】 Digonophorus属分類の有効性について

 ヒマラヤ山脈から雲南の山脈群にかけてGenus Digonophorus Waterhouse, 1895:セスジクワガタ属が分布する。殆どが西暦2000年以降の十数年で次々と発見された新分類群。

 中標高〜高標高にかけて分布し、成虫の雌雄で形態差が大きい事から♂と♀で別種扱いだった時代もあった。

f:id:iVene:20231112001137j:image(分類群単位では粗方揃え、友人達の個体群も見せてもらい判別法も大体を理解。♀の分類群識別は難易度が高い)

 Digonophorus属については複数種が見つかるまで"Dorcus属なんじゃないか"という説が長らく並行しつつ存在し、2013年には中華鍬甲2でシノニムとする分類が見られた。

 しかし私も友人達も"安定的な雌雄差異と特徴に特異性がある事"を根拠にDigonophorus属は有効と考え、中華鍬甲2のシノニムとする分類に従わない考えになっている。新たな分類群が見つかるにつけ、どの分類群の♂もDorcus属らしさに欠ける。♀は悩ましいが其れは他属でも同様。

 そもそも中華鍬甲2でMiwanus属が認められDigonophorus属が認められないという論理は基準が不確か過ぎるという事もあった。Digonophorus属シノニム処遇は分類の手法が曖昧だった事が原因だったと考えられる。

 属の分類はシンプルに"分類の簡潔化"が大きなメリットと考えられるが、其の方法自体が目的化して細分的になる事が良くないという事もある。しかし"どう考えても一纏めでまとめられるだろう"という分類群を纏めない属の集約化もまた認知の複雑化を齎す。

https://fanblogs.jp/anotherstagbeetlesofworld/archive/61/0Prosopocoilus prosopocoeloides (Houlbert,1915)もDigonophorus属である可能性が高い。実物は艶消しで暗褐色。♀がDigonophorus属的であるか否かで分類が決まると考えられるが、、)

 Digonophorus属は其の見た目からもヒマラヤの高地で特化した古い系統群と考えられる。分化と特化の不思議について色々な想像を掻き立てさせてくれる、本来とても面白い生物群の一つ。

【References】

Waterhouse, C. O., 1895. Descriptions of new Coleoptera in the British Museum. The Annals and Magazine of Natural History, Including Zoology, Botany and Geology. London 6(16):157-160.

Parry, F. J. S., 1862. Further descriptions and characters of undescribed Lucanoid Coleoptera. Proceedings of the Entomological Society of London 3:107-113.

Nagai, S., 2000. Twelve new species, three new subspecies, two new status and with the checklist of the family Lucanidae of northern Myanmar. Notes on Eurasian Insects Nr.3 Insects :73-108.

Schenk, K.D., 2008. Lucanidae of the Arunachal Pradesh, India and description of two new species (Coleoptera: Lucanidae). Entomologische Zeitschrift 118(4): 175–182.

Huang, H. & Chen, C. C., 2013. Stag beetles of China II. 1-716.

Okuda, N. & Maeda, T., 2015. Three new species of the family Lucanidae from Arunachal Pradesh, northeastern India. Gekkan-Mushi 528:29-34.

Okuda, N. & Maeda, T., 2015. Two new species of the genus Digonophorus and a new species of the genus Prismognathus (Coleoptera, Lucanidae) from Arunachal Pradesh, northeastern India. Gekkan-Mushi, (532): 35–39.

Huang, H. & Chen, C. C., 2016. Two new species of stag beetles (Coleoptera: Lucanidae) from western Yunnan, China. Insecta mundi 0516: 1–8, figs.45-47, 49-50, 52, 54-55.

Okuda, N.; Maeda, T. 2020: Three new subspecies of the genus Digonophorus (Coleoptera, Lucanidae) from Arunachal Pradesh, northeastern India. Gekkan-Mushi, (588): 22-27.

Houlbert., 1915. Description de quelques lucanides nouveaux de la tribu des Cladognathinae (Fin): Insecta, revue illustree d’Entomologie, Rennes 5:48-54.

【追記】

 Digonophorus属の分類群はデータも含め良い原記載が多い。いや、殆どが"普通"の体裁で書かれた記載だから再現性の高い内容の記載文になっていると言うべきか。。。

、、、、、

 正常ではない疑似科学的な論文等を考える際、科学者達はどうしているかというと"最初から信用しない"が対策として採用される。

 「理系なら疑ってかかれ」という言葉があるのはあるが、人によっては疑っただけで何の答えにも到達すらしないまま終わる事もある。一定の答えを導きだし客観的に可視なものとせねば、其れは科学的な立証とは言えない。しかし"疑って分からなかったから信用してしまう"という思考にシフトしてしまう人達がいて、そういう人達が詐欺に引っかかる。其れを踏まえて科学的に「信用しない」という方式がどう活用されるかというと"詐欺の被害に遭わないような対策"とされる。

https://x.com/zimkalee/status/1722414022551867879?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw

 疑似科学的な例の多くの問題を抱えると考えられる転売行為に焦点をあててみる。例えば転売屋が虫を売っていたとして、其の売られる虫の採集データの真偽性は客観的には判別がつかないから、第三者はそもそもデータを信用する義務を持たない。他者に転売屋を信用するよう促す事も欺瞞を孕む。転売行為には本質的な問題がある。

 例えば私は"採集家から直接入手した資料"を沢山持っていて、そういう個体群のデータは信用しているが、其れ等以外は時代背景や流通動向でデータの真贋を考える。生物学的現象は特に遺伝学等で見られるように、大雑把な見た目の様子と実態が異なる意味を持つとされる知見が多数ある。だから例えば飼育個体群が出回った分類群などは、ある程度累代が進むくらい時間が経過したならばデータの正確性は真偽不明の時代に入るため以降は採集家以外から入手しないよう対策する等が推奨された。長年意識していて最も良かったと考える事の一つに、やはり有名無名関係なく転売行為に手を染める者達の言う話を全て疑ってかかってきた事がある。

 しかし虫業界はめまぐるしい変遷とは裏腹に結構緩い感じが長らく続いてきた。色々批判的な目線を持つ人達ですら転売行為を寧ろ正当化・奨励していたりして、逆に転売行為そのものを科学的な視点から批判する人間は学者すら皆無の様相。特に某SNSの虫界隈はバランスを欠いている。認知的問題を軸に考えれば放虫問題と同等の問題で、そこまで"統一的"に不都合な事とは思えないのだが、まぁ"転売行為そのものが問題だ"とは言えない人達も沢山いるだろう。

https://www.t-nakamura-law.com/column/%E8%BB%A2%E5%A3%B2%E8%A1%8C%E7%82%BA%E3%81%A7%E9%80%AE%E6%8D%95%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%82%89%EF%BD%9C%E9%81%95%E6%B3%95%E8%BB%A2%E5%A3%B2%E3%81%AE%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%84%E5%88%91

 インターネットの発達とともに生物業界では詐欺的な問題が多数増えつつあるが、其の問題を根絶する以前に"生物体の転売行為"が常態化しているから詐欺の温床となっていると考えられる。転売を許される人達とそうでない人達の基準が曖昧なままで詐欺が云々の話が延々と続くが、私からすれば"全ての転売屋は消えるべき"としか考えられない。許される転売屋が何故存在するか、客観的な線引きが分からないから詐欺が横行する。党派性に偏った政治活動ばかりやってないで、平等且つ公平に転売屋が絶滅すればあらゆる混乱が減少すると予想する。科学的に考えれば、様々な混乱の原因は転売屋の商売と疑似科学シナジーにあるから解決されにくくなっていると解る。転売の正当化は詐欺の横行と連動する。詐欺の上流にある転売問題に切り込めないならば詐欺問題にも切り込めないと考えられる。

https://x.com/botomeze/status/1722455506667946384?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw

嘘吐きは泥棒の始まり

 平気で嘘をつけるような人は盗みも悪いと思わなくなるという例え。転じて、嘘をつくのはよくないということ。

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%98%98%E5%90%90%E3%81%8D%E3%81%AF%E6%B3%A5%E6%A3%92%E3%81%AE%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%82%8A

 様々な問題があるため結構昔から友人達には「全ての転売屋は重大なリスクを抱える」と話してきた。友人達も色々な転売行為に悩まされてきたらしく理解を示してくれるが、標本商の友人は「解るけどどうしようもないで」とコメントされる。

f:id:iVene:20231112000536j:image(分類屋の友人は慧眼のコメントをされた)

 科学者の方々は実験科学の基本を軸とし、転売されるデータの不確かな生物個体を考察に使う意味は無いとされる。仮にそういう不確かな手法を含めて書かれる分類学論文は"有害"ともされる。生物を転売する人達にはそもそも科学的な信用が無いのだそうだ。必要以上に信頼を求める転売屋は詐欺に抵触する事も有り得るだろうと。

 此のように疑似科学や転売屋の話を信じ込むなど科学的には有り得ないのが普通だが、"教条主義"に陥った人達はなかなか現実世界の価値観に帰還出来ない。転売屋の信奉者は自称研究家だったとしても先行きが暗い。

教条主義
 状況や現実を無視して、ある特定の原理・原則に固執する応用のきかない考え方や態度。特にマルクス主義において、歴史的情勢を無視して、原則論を機械的に適用しようとする公式主義をいう。ドグマチズム。https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%95%99%E6%9D%A1%E4%B8%BB%E7%BE%A9/

 転じて融通の利かない人を揶揄する言葉。

事例

 憲法9条原理主義
 極左暴力集団
 カルト宗教信者
https://d.hatena.ne.jp/keyword/%E6%95%99%E6%9D%A1%E4%B8%BB%E7%BE%A9

マルクスレーニン主義が好きな人や好きだった人は頭が単純ですね。

だから「教条主義から脱しよう」と言って、ますます教条主義にはまってゆきます。
でも本当は利己主義者なのです。だから自分の利益にかなうときはものすごく柔軟です。
教条などは眼中になく、ただただ己の欲望の奴隷です。
自分の利益に反するときはその「教条」を指し示し「それは間違っている」と主張します。

まぁ、そんなもんですよ。
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9032075.html

 教条主義の危険性は"歴史の政治利用"など様々な面で見られるが、一般的な理解の浸透は途上にあると考えられる。あらゆる業界で非難轟々の転売含め、いずれは法規制もあるかもしれない。

http://ceec.blog.fc2.com/?mode=m&no=3742

https://x.com/purplepearl39/status/1719561244280262928?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw