【Memorandum】マダガスカル島とコモロ諸島のProsopocoilus属種群に係る問題

 コモロ諸島マダガスカル島では、それぞれでノコギリクワガタ属種群の分布が見られる。しかし其の分類上の問題として気になる点が多数見つかったため今回まとめていく。

f:id:iVene:20230601002740j:imageマダガスカル島Prosopocoilus。巨大な完全大歯は結構な迫力)

 先ずはマダガスカル島に分布のある普通種"セリコルニスノコギリクワガタ"について。此の分類群は生物形態として外形で様々な種内変異を見られる事も一つ特徴的だが、特に交尾器形態に様々な連続した種内バリエーションが見られる例として大変好例である事はあまり知られない。島内でのProsopocoilus属種は専ら此の1種のみ観察される(黒色味の強い個体群の多い産地、赤色味の強い個体群の多い地域もあるらしい)。

 では原記載を辿ってみる。スケッチは明瞭で判断に困る別分類群は見られない。

f:id:iVene:20230531202040j:image

f:id:iVene:20230531202052j:image
f:id:iVene:20230531202054j:image(「Latreille, P. A., 1817. Les crustacés, les arachnides et les insectes. Cuvier G.: Le Règne Animal Distribué d’après son Organisation pour Servir de base à l’Histoire Naturelle des Animaux. Déterville Paris 3:1-653.」より引用。原記載記述は学名及び形態説明と基産地表記のみ)

 ただし学名の原綴りは"Lucane serricorne"となっていて、後出の書籍に見られる綴りと異なる。此れについては少々突っ込んだ説明をすると、先ず"Lucane"なる属名は正式な記載が無く、恐らく原記載時点ではフランス語で書かれたと予想する(原記載説明文もフランス語)。

 此の分類群学名については後出記載にて"Lucanus serricornis"、"Prosopocoilus serricornis"と変化して伝えられ今に至るらしいが、しかし此の変化は妥当な理由で為されたものでは無かったと考えられる。

 というのも現行の国際動物命名規約第四版でも"語源の特定出来ない種小名の語源は名詞扱いで、種小名が名詞ならば結合する属名に語尾の性を合わせる為に変化させてはならない"と読解される条文が並び、必要性云々に左右される条48等よりも優先度が高い(ホモニムに関しても"語源の意味が合同か否か"で1文字違い等の学名綴りの扱いが全く異なる条文が有る)。

 フランス語は名詞でも語尾の性が変わる文法で、"serricorne"の種小名の語源は同格の名詞だった可能性があったのかもしれないし、そもそも語源説明が全く無く何語由来だったかさえ不明で特定出来ない。とにもかくにも語源が分からず、"命名規約で定められる修正の要件"に至る要素が無いから"種小名の原綴り"を変化させる根拠が無い(原記載にて種小名の語源説明は無く品詞を特定出来ないため"種小名の語源は形容詞だった"等と後から決め付けてはならない)。

 少なくない後出記載者がやってきたように、否応なく名詞と見做さなければならない種小名でも簡単に語尾の性を変える人達が多かったから、其れによって引き起こされる学名の不安定化を防ぐ目的で命名規約で其れを制限されてあるという話。

f:id:iVene:20230531200653j:image

f:id:iVene:20230531200702j:image

f:id:iVene:20230531200713j:image

f:id:iVene:20230601192202j:image

f:id:iVene:20230601192256j:image国際動物命名規約第四版より引用。完全に理解するには此処でピックアップした条文では足りず、全ての条文を"不可分に理解する必要"があるが、原公表において語源説明の無い種小名は全てニックネーム由来である可能性を内包すると考えて条文を読み直すと分かり易いかもしれない。例文等の言い回しは誤読されやすい表現で、後出記載で性語尾を変える人は条48みたいな効力の殆ど無い条文が優先されると考えていて"必要ならば"という文言により他の条文との関わりがある事を認識出来ていない。条48の"適格な"は見做し的表現であり原記載論文執筆中〜公表時点で意味が通る)

 国際動物命名委員会の公式サイトでも"Linnaeus gave each species a two-word name made up of a genus name and a specific name, e.g. Homo sapiens for modern humans. The method soon caught on and is still used by scientists today."と説明が明記されるように、命名規約に従うならば、出版時よりも後の"種小名"は固有名詞であり後出記載時点では属の結合が変わっても種小名の綴りを変化させてはならないと解る。

https://www.iczn.org/outreach/guidelines-for-authors-and-editors/whats-in-a-name/

(下に続く"SOME COMMONLY USED ZOOLOGICAL NAMES"は俗称名のリスト。そのため原著者氏名と記載年月日は併記されない)

 さてもしかし、今代では"Prosopocoilus serricornis"の方がよく見られる学名であり、優先権の逆転が起こっていないか調べる必要があったため調べてみれば、結果的に優先権の逆転に必要な期間内に必要な条件は揃っておらず、修正の要件すらエビデンスが無い。つまりProsopocoilus serricorne (Latreille, 1817)が有効な学名として確定的と考えられる。

 実際過去に私自身も巷の会話上等で多用される呼び名に倣い"P. serricornis"を使用してしまっていた事もあった。しかし其れでは命名規約の論理とどうしてもぶつかる表現方法になる。原綴りを維持する方が、どう考えても命名規約の論理や理念に合う。

 学名の安定の為には其れくらい命名規約と原記載は重視され、後出記載よりも優先される事が様々ある。其の事について命名規約を読解した経緯と解釈は当blog本館の2021年の記事に詳細を纏めてある次第。

https://ivene.hatenablog.com/entry/2021/10/16/132331

 シンプルに言ってしまえば、上記のように学名の安定の為に"原綴りを変更する事に反対する条文"が命名規約に沢山有るから、変えられないという話でもある。 

、、、、、、、、

 さて、一方でマダガスカルとアフリカ大陸の間に在るコモロ諸島からは"Prosopocoilus viossati Bomans, 1987:ビオサットノコギリクワガタ"と"Prosopocoilus punctatissimus (Fairmaire,1893):プンクタティシムスノコギリクワガタ"の2分類群が知られる。両分類群とも"P. serricornis"の亜種にされる例が見られるが、一般的な図鑑等で其の同定をされる2生物集団の交尾器形態は異なり別種の関係と考えられる。

 しかし調べている内に多数派の後出知見と符合度の低い記述が原記載にて見られる。此れ等についても過去に触れてある知見が見当たらないため現状可能な限りまとめてみる。

 コモロ諸島マダガスカルの西に位置し、グランドコモロ島、アンジュアン島、モヘリ島、マヨット島があり、現在のマヨット島はフランスに属するが、他3島はフランスから独立しコモロ連合なる国家を構成する。

 なお手元に良いデータのコモロ連合側産Prosopocoilus個体群が無いので、其方については文献を参照してゆく(※実物比較については別途記事にて後日記す)。

f:id:iVene:20230531223705j:image(「Krajcik, M., 2003. LUCANIDAE OF THE WORLD Catalogue – Part II., Encyclopaedia of the Lucanidae (Coleoptera : Lucanidae), Czech.」より引用。P. punctatissimusのタイプはMNHNに1♀有るという事らしい。またTaroni, 1998の分類を引用される)

f:id:iVene:20230531230226j:image(「Taroni, G. 1998. Il Cervo Volante (Coleoptera Lucanidae): natura, moto, collezionismo. Milano: Electa.」より引用。暗褐色の小型♂。画質はボヤけるが見た目は"P. punctatissimus"として様々な文献で見られるコモロ連合3島産の個体群に近似する)

 1893年のFairmaire氏による記載種"P. punctatissimus"は原記載で基準産地を"マヨット島"とされ「"P. serricornis"に比べて大顎がやや発達したのみの小型で細身、頭部と胴部は明色で、エリトラの点刻は強く密」等が根拠で分類された。「"Ch. Coquerel氏によりマヨット島から齎された"とされる1♀は同様の強く密な点刻を呈する」と締めくくられた説明だった。

f:id:iVene:20230531232908j:image(「Fairmaire, L., 1893. Coléoptères des îles Comores. Annales De La Société Entomologique De Belgique 37:521-555.」より引用。最初はCladognathus属で記載された。体長は20mmらしい)

 後出記載では基産地をマヨット島ではなく"コモロ諸島"と曖昧に意味をボカされた記述である例も散見され難しい気分になる。

 Fairmaire氏はコモロ諸島について、生物層からマダガスカルの地形に属する事を説明した。

 同文献にてFairmaire氏は、René Oberthur氏を介して入手した"Humblot氏のもたらしたグランドコモロ島とマヨット島Prosopocoilus属個体群"を"Dorcus serricornis"と認識したが、Humblot氏が採集したグランドコモロ島産個体群は英国の博物館に数ペアあり一般的に"P. punctatissimus"と同定されるものに一致する形態だった。

https://data.nhm.ac.uk/dataset/collection-specimens/resource/05ff2255-c38a-40c9-b657-4ccb55ab2feb/record/953094

f:id:iVene:20230531233058j:image
f:id:iVene:20230531233054j:image(「Fairmaire, L., 1893. Coléoptères des îles Comores. Annales De La Société Entomologique De Belgique 37:521-555.」より引用。Fairmaire氏による諸生物種学名原記載の前頁に有る序論)

f:id:iVene:20230531233040j:image(「Fairmaire, L., 1893. Coléoptères des îles Comores. Annales De La Société Entomologique De Belgique 37:521-555.」より引用。此方のリストではHumblot氏からのグランドコモロ島産と、マダガスカル島産について序論に見られた"Dorcus serricornis"を別属に移して"Cladognathus serricornis"として表記され、"Humblot氏からのマヨット島"は"Cladognathus punctatismus"にされてある※脱字が見られる。C. punctatissimusの原記載記述では"Ch. Coquerel氏からのマヨット島"が記述され、序論でHumblot氏から得たマヨット島産は"Dorcus serricornis"とされてあり変化が見られる)

 Fairmaire氏がマヨット島産だけでなくグランドコモロ島産も"Dorcus serricornis"と認識したのは、2島から酷似した黒化型個体群が見られたからと考えられるが他詳細は不明瞭。

https://unmondeencouleurs.piwigo.com/index?/category/3788-serricornis_ssp_punctatissimus_fairmaire_1893

コモロ連合側からは黒化型の"P. punctatissimus"も見つかっているらしい。ちなみにやはり♀の点刻は明瞭に"強く密"に見える)

f:id:iVene:20230531225448j:image
f:id:iVene:20230531225446j:image(「Fujita, H., 2010. The Lucanid beetles of the world Mushi-sha’s Iconographic series of Insect 6.472pp., 248pls. Mushi-sha, Tokyo.」より引用。図版編の方では産地表記が"アンジュアン島"となっていたが、解説編では♂についてグランドコモロ島産とある。此れが本当なら赤っぽい色から黒化型まで色彩変異が有るという話になる)

 今代の知見では、マヨット島から採集されるのは今代専ら"P. viossati"の1種で、コモロ連合3島側から見つかるProsopocoilus属の生物種と一致する個体群はマヨット島から新たに記録が無い。

 "P. viossati"の原記載は"P. punctatissimus"との比較が無いが、原記載者Bomans氏はアンジュアン島の個体群等を"P. punctatissimus"として同定した(アンジュアン島というとシーラカンスの発見で有名な場所)。

https://data.nhm.ac.uk/dataset/collection-specimens/resource/05ff2255-c38a-40c9-b657-4ccb55ab2feb/record/941533

f:id:iVene:20230601133058j:image(「Mizunuma, T., & Nagai, T. 1994. The Lucanid beetles of the world. Mushi-Sha Iconographic Series of Insects. H. Fujita Ed., Tokyo 1:1-338.」より引用。アンジュアン島産。よくよく見るとナタールノコギリクワガタに似るが詳細は別途記事にて。記録のあるコモロ連合3島では♂も殆どが小型で大顎も短歯型の35mm辺りが最大とされるが、故・稲原延夫氏の所蔵個体には45mmに迫る19世紀末グランドコモロ島産個体も有った)

 "P. punctatissimus"の1♀はタイプ個体としてパリの博物館にあるとKrajcik, 2003にあったが再発見は未だらしい。見つかれば、そのうち公開されるかもしれない。

 "P. punctatissimus"の原記載記述によれば、コモロ連合3島側の♀によく一致する。そもそもタイプはCh. Coquerel氏が齎したとのマヨット島産1♀だけではなかったかのような記述にも読める原記載で"Ch. Coquerel氏の♀は"P. punctatissimus"と同様"という後付けの説明。原記載者Fairmaire氏が用いたP. punctatissimusのタイプは他にも有って別な複数個体群をメインに考えた背景が垣間見える。其れ等がHumblot氏からのマヨット島産だったか否かは不明だが、其れ等にCh. Coquerel氏の"マヨット島産"1♀も似ていたという文章にも見える。

 しかしFairmaire氏はマヨット島産を"C. punctatissimus"や"C. serricornis"と考え、グランドコモロ島産を"C. serricornis"と考えた。実際のグランドコモロ島から見つかる♀で、マヨット島産の♀よりもP. serricorneに似た点刻の外形個体は全く見られない。どういう事なのか。

 "P. punctatissimus"の原記載では"P. serricornis"と比較して点刻が強く密との説明があるが、"P. viossati"とP. serricorneでの点刻の差異はかなり微妙。対してコモロ連合3島側で見つかっているノコギリクワガタ♀は点刻が強く密で明瞭な差異が見られる。しかし此れ迄にマダガスカル島以外から間違いなくP. serricorneと同定可能な個体が採集された実態的前例は無い。"P. viossati"はマヨット島以外から記録が無いが、Fairmaire氏が観た当時の未記載時点で"P. serricornis"と誤同定された可能性は考えられる。Fairmaire氏がグランドコモロ島産を"C. serricornis"とした考えの記述を信じれば、明らかに今代見られる実態とは真逆の観察結果をFairmaire氏が発表しているとしか考えられない。

 19世紀のフランス統治下になって間も無い時代は、マヨット島は割合便利な港が作られ比較的入り易かったものの、西側の諸島は良い港が無く入りづらかったらしい。"もしかして"な話だが、Humblot氏の齎した個体群もCh. Coquerel氏の個体群も、実際は"マヨット島産"ではなくマヨット島は集荷地だった可能性は無かったろうか。グランドコモロ島産の成果物を当時の採集人達がマヨット島に集めていた可能性は無かったろうか。其れでHumblot氏やCoquerel氏からFairmaire氏が成果物個体群を受け取る迄に、或いはFairmaire氏の管理下で、"グランドコモロ島産"と"マヨット島産"のデータラベルが一部か全てか入れ替わったのではないのか。

 なおHumblot氏の齎した成果物にはコモロ諸島のどの産地か分からない個体もあったらしい事が博物館の記録ページからも分かる。現状の予想としては、Fairmaire氏の管理下で何かが起こった可能性が最も現実味を帯びる。

https://data.nhm.ac.uk/dataset/collection-specimens/resource/05ff2255-c38a-40c9-b657-4ccb55ab2feb/record/953096

f:id:iVene:20230531224900j:image

(「Ikeda, H. 1993. Stag beetles from all over the world.」より引用。此の書籍に載る1ペアは"コモロ島"とデータ表記されるが、コモロ諸島のいずれかの島の産と考えられる。曖昧なデータの個体群もあったという例)

 タイプ個体群を観ずに記述の産地だけで考えればシノニム説が優勢的になってしまうが、こういう風に原記載を精読してみると難しい気分になる。

f:id:iVene:20230531231741j:image(「Bartolozzi & Werner. 2004. Illustrated Catalogue of the Lucanidae from Africa and Madagascar. ― Hradec Kralové (Taita Publishers): 189 pp.」より引用。左♂はアンジュアン島産、右♀♂はモヘリ島産。コモロ連合3島で見られるProsopocoilus属個体群は外形では同型らしい。強いて言えばグランドコモロ島産は大顎の太い個体が多く、アンジュアン島とモヘリ島産は大顎が細めの傾向が見られる。♀のエリトラに表面の点刻が他近縁種よりも明らかに粗い事は此の図からもよく分かる。此の文献では基産地が"Comores"と表記される)

 "P. viossati"を記載したBomans氏は、記載前〜記載後にコモロ諸島アンジュアン島などの"P. punctatissimus"を同定しており、認知の精度が気になる。なおBomans氏は"P. viossati"の原記載で"P. punctatissimus"との比較を示していない。

f:id:iVene:20230601002910j:imageマヨット島産"P. viossati"に一致する個体群。雌雄ともにエリトラ表面にある点刻の入り方はP. serricorneと殆ど変わらない)

 もしかすると"P. punctatissimus"のタイプ個体データに誤りがあったのかもしれないが、此の感じの記載なので1♀だけタイプを再観察したとしても結論を出すのは難しい。そもそもコモロ連合側からの♀は個体数が少なく、古く状態の微妙なものばかりでタイプとの比較用には不足を感じる。また現段階では変異幅も不明であるし「マヨット島に"P. viossati"の他に"P. punctatissimus"が極少数ながら分布が無い」とも同地で調査例が少ない今では言えたものでは無い(古い時代の伐採で絶滅したなんて可能性もあったのかもしれない?)。タイプが1頭だけだったなら奇形だった可能性も否めない。

 この分類群を再検証する場合、タイプをどう考えるべきか調べる目的には、現存の資料だけでは心許ない気もする。古い記載だから仕方ないのかもしれないものの、こういう記載の分類群は此のように困る。生物資料を原産地のそれぞれで新しく採集せねばならないが、コモロ諸島森林伐採が世界屈指のスピードで行われているとの話で大変厳しい条件下にあるらしい(しかし再調査と言ってもマヨット島から大量に"P. viossati"が見つかっていて別種が混じって採集された例なんて聞いた事が無い)。保全的な話も見られるが今更なのかもしれない。絶滅しておらず生き延びている事を祈るばかり。

https://jp.mongabay.com/2017/01/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E5%B8%8C%E5%B0%91%E3%81%AA%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%80%81%E6%80%A5%E6%BF%80%E3%81%AA%E6%A3%AE%E6%9E%97%E6%B8%9B%E5%B0%91%E3%81%A7%E7%B5%B6/

f:id:iVene:20230531230927j:image(「Mizunuma, T., & Nagai, T. 1994. The Lucanid beetles of the world. Mushi-Sha Iconographic Series of Insects. H. Fujita Ed., Tokyo 1:1-338.」より引用。見落とされがちだが"P. viossati"の完全大歯型は極稀だが出現する。図にあるような個体はP. serricorneに似るも大顎基部内縁の湾入が強い事で見分けられそう。しかし"P. punctatissimus"と"P. viossati"の学名はどういう関係なのか、文献を精読するのみでは恐らく"P. punctatissimus"の原記載に不備があり、現行の分類のままで問題ない事を期待したいが、)

 調べてみれば混乱の火種が沢山見られるグループだった。生物学的には面白いのだけど。とりあえず此の話題についてはナタールノコギリクワガタと共に続く。

https://ivene.hatenadiary.jp/entry/2023/05/21/201012

【References】

Latreille, P. A., 1817. Les crustacés, les arachnides et les insectes. Cuvier G.: Le Règne Animal Distribué d’après son Organisation pour Servir de base à l’Histoire Naturelle des Animaux. Déterville Paris 3:1-653.

Fairmaire, L., 1893. Coléoptères des îles Comores. Annales De La Société Entomologique De Belgique 37:521-555.

Bomans, H. E., 1987. Diagnose d’une nouvelle espèce de lucanide des Iles Comores (62e contribution à l’étude des Coléoptères Lucanides). Nouvelle Revue d’Entomologie (Nouvelle Série) 4(4):362.

https://unmondeencouleurs.piwigo.com/index?/category/4153-prosopocoilus_viossati_paratypus

https://unmondeencouleurs.piwigo.com/index?/category/4068-prosopocoilus_viossati_paratypus

Ikeda, H. 1993. Stag beetles from all over the world.

Bartolozzi & Werner. 2004. Illustrated Catalogue of the Lucanidae from Africa and Madagascar. ― Hradec Kralové (Taita Publishers): 189 pp.

Mizunuma, T., & Nagai, T. 1994. The Lucanid beetles of the world. Mushi-Sha Iconographic Series of Insects. H. Fujita Ed., Tokyo 1:1-338.

Fujita, H., 2010. The Lucanid beetles of the world Mushi-sha’s Iconographic series of Insect 6.472pp., 248pls. Mushi-sha, Tokyo.

Taroni, G. 1998. Il Cervo Volante (Coleoptera Lucanidae): natura, moto, collezionismo. Milano: Electa.

Krajcik, M., 2003. LUCANIDAE OF THE WORLD Catalogue – Part II., Encyclopaedia of the Lucanidae (Coleoptera : Lucanidae), Czech.

【追記】

 絶滅危惧種を危ぶむ声は様々なところで散見されるも、其れにしてはヤケに"余裕さ"が目立つものが多い。急いでいるのか格好を付けたいのか判断の難しいシュールなプレゼンをよく見る。

https://twitter.com/tezukakaz/status/1656546877305937926?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw

 友人達と開発産業による環境破壊について議論していても、世界的に絶望感の漂う産地の話ばかり耳に入る。

https://twitter.com/fumifum00609510/status/1664109343363694592?s=46&t=6MVYq5Ovmu_MXJ16l5mXpw

 危急と考えられる環境破壊について、なんだか"ゆっくり対策しても未だ大丈夫"みたいな表現をする人達とは、やはり感性が全然合う気がしない。

https://square.umin.ac.jp/~massie-tmd/diovanjikendema.html

、、、、

 分類屋の友人は"虫の分類を考えるにもやはり人"と仰られる。例えば分類学に首を突っ込めば先ず"タイプ個体"等の"他者採集個体群"を考えなくてはならなくなる。

 科学というのは客観的な真実を探り、再現性を確認していくものでもあるため、他者採集個体群について考える科学的手法は親和性が高い。

 科学的手法は様々な現象について再現性を確保する良い指標になる。それこそノーベル賞受賞研究を選出する方法から、研究不正をやる悪人達の看破にまで。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E7%9A%87%E5%B8%9D

【近況】

 ミャンマー琥珀から新たに間違いなくクワガタムシ科と言えるものが1片見つかったとの報を受けた。触角もクワガタムシ亜科的で頭部の保存状態がかなり良い。白亜紀のものとしては大きい方。私の持つ6個体目に似るも、やはり新たな資料の発見は喜ばしい。現実に在る自然の偉大さを思い出させてくれる。